【ミナクルわんわん物語】卒業プレゼント

いぬのようちえんにのスタッフの多くは、ドッグトレーナーの専門学校に通っていることがほとんどです。

学校では、実際に〝学校犬〟という犬たちと共に生活をして、彼らと共に成長していきます。

そんな、学校でのエピソードにも、たくさんの愛にあふれたお話があります。

その絆、気まぐれですか!?

登場犬名:ガルマ
犬種:ワイマラナー
年齢:3歳
話してくれた人:矢野健介(20歳)


昔から犬と触れ合うことが大好きで、高校生のときにドッグトレーナーを目指そうと決意して専門学校に入学しました。

そこで僕は、今でもお世話になっている大先輩のYさんと出会ったのです。

Yさんはとても面倒見がよく、トレーニングの指導をするときもかなり丁寧で、かつどんなときでも頼れる先輩でした。

あまり大声では言えませんが、他の先輩方より優秀なのが素人の僕たちでも分かるくらいとても器用な方でした。

そして、その先輩がいつもトレーニングをしていたのは、学校犬のワイマラナー・ガルマです。

うちの専門学校では、入学したら学校にいる犬の担当をさせてもらえることになっていました。

1人につき1頭。

入学するまでは、どの犬になるかは分かりません。

先輩は、そこでガルマと運命の出会いを果たしたそうです。

※ ※ ※

先輩とガルマは、はたから見ていても分かるくらいとても素晴らしいパートナーでした。

学校犬という枠を超えて、自分の愛すべき犬のような、はたまた友のような、まさに学校中から認められた名コンビ、名パートナーとして知られていました。

どんな課題も2人の息は常に揃っていて、うまく出来ないコンビからしたら、それはもう羨ましくて羨ましくて仕方ありません。

もちろん、僕もそんな先輩とガルマに憧れを抱いていました。

※ ※ ※

だけど、なんでも出来る優秀な2人でも、唯一出来ないことがありました。

それは、ドッグスポーツの1つである「ディスク競技」。

ディスク競技とは、簡単にいうと〝フリスビー〟なのですが、犬と息を合わせて行なうスポーツの1つです。

あれだけ息の合う先輩とガルマならなんの問題もないと思っていましたし、むしろ超優秀な成績を残しているものだとばかりに思っていたので、正直なぜ出来ないのか見当もつきませんでした。

何か、ガルマにトラウマがあるのか……?

1年生の頃からずっとチャレンジし続けているそうなのですが、いまだにうまくキャッチ出来たことがないらしいのです。

※ ※ ※

僕らの専門学校には、卒業式前に〝運動会〟という大イベントがあります。

今まで勉強したことを試したり、やってきたことを披露する晴れ舞台で、大学生でいうところの卒論にあたるものです。

ここで有終の美を飾れたら思い残すことはない。

そこで、先輩とガルマもディスク競技で最高のパフォーマンスを披露出来るように猛練習していたのですが、結局、最後までフリスビーをキャッチすることは出来ず、運動会は終わってしまいました。

そして、そのまま卒業を迎えることに……。

運動会後も練習は続いていたのですが、一度としてキャッチすることはありませんでした。

※ ※ ※

学校犬という関係上、ガルマとは、卒業と同時にお別れしなければなりません。

先輩は最後の記念にと、長年連れ添ったパートナー・ガルマと散歩をすることにしました。

そのとき先輩はいつもの癖でディスクを持っていました。

「これで終わりか……」

そういう想いを抱きながら、いつもと同じ力加減でいつも通りにディスクを放り投げたのです。

特に、期待もしていない最後の一投。

「楽しかったよ」、「ありがとう」という気持ちだけ乗せた最後の一投だったのでしょう。

澄み渡った青空の下を、フリスビーがキレイな放物線を描いていきます。

すると、ガルマがまさかの行動に……。

そう、ガルマが、先輩の気持ち、想いに応えるかのように、初めてディスクをキャッチしたのです。

「今かーい! どんだけ気まぐれなんだよ!」

と、思わずつぶやきそうになりましたが、きっと、これはガルマからの卒業プレゼント。

2年間の頑張りが実を結んだ瞬間、先輩とガルマの絆を示す、奇跡的な一投が舞い降りたのではないでしょうか。

園長先生からの一言

犬には、こういう気まぐれ行動はよく見られます。なぜか、まったく出来なかったことが、あるとき、突然出来るようになる……、人間の赤ちゃんや子どもも同じですが、突然出来るようになることは多々あります。

ですが、ガルマくんの場合、おそらく、もう一投してもうまくキャッチはしてくれないでしょうね。

最後の最後で彼らの意志が通じあった、奇跡の瞬間だったのではないかと思います。

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