【キムラケンジの3時のごはん】第8食「オムライスを巻く必要はあるのか」

世の中で最も美しいフォルムの料理の1つが、オムライスだということに異論はないはずだ。赤と黄色が織りなす、色彩美の競演。なめらかな曲線と丸みの帯びた、愛らしい姿。この完璧な見た目の料理を美しいと思わない人がいるであろうか。(いや、いるはずがない)

しかし、このオムライス、みんなが大好きで定番の料理であるのにもかかわらず、綺麗に作るのが非常に難しいことでもおなじみである。自慢ではないが、私は一度たりとも、上記のような美しいオムライスを作ったことがない。

「それはお前の料理の腕の問題だろう」と言われてしまえばそれまでだが、私のオムライス作りスキルが上達しないのには訳がある。それは、「オムライスはべつに巻かなくても味は同じだろう」と思ってしまっているからである。

先ほど、美しいフォルムだの曲線だの、あれこれ言ってたが、私自身がつくるオムライスにそのような様式美は存在しない。雑に作ったケチャップライスに、なんだかゆるっとしたスクランブルエッグのようなものがのっているだけだ。

しかし、味は間違いなくオムライスであり、それこそ口の中に入れてしまえば何の違いもない。むしろ、あの美しいフォルムをスプーンで崩してしまうという罪悪感がない分、オムライスを心おきなく食べれるという”優しさ効果”も期待できる。

だが、人々は巻くことをやめない。なぜなら「オムライス」は「オムレツのようなライス」であり、あの形でこそ、オムライスと呼べるのだ。

だから、先述した、私が作るオムライスは、厳密にいうとオムライスではない。ただの「たまごのせごはん」なのである。不思議なことに、この呼び方になるだけで、一気に魅力が激減する。

「今日はオムライスよ」

この言葉には、子どもたちの喜ぶ顔が思い浮かぶが、

「今日はたまごのせごはんよ」

これはなんだか微妙だ。

そう考えると、私もオムライスを作るときは、横着せずにしっかりと巻いた方がいいのではないか。と思い試しに作ってみたが、なかなかうまく出来ない。火が通りすぎてフワフワではなかったり、たまごが破けたりと散々な有様だ。

そして3度目のチャレンジをしようと思ったときに、ふと思った。

いったい私はなにをやっているのだと。

無謀にも、美しいオムライスに挑戦しているものの、食べるのは私自身である。私自身があの「たまごのせごはん」を「オムライス」として自覚しているなら、それはそれでいいじゃないかと。

かくして、私の「美しいオムライス」への挑戦はここに幕を閉じた。

ちなみに、私の好きな女性のタイプは、「はじめての手料理に、ふわふわのオムライスを作ってくれる人」である。もちろん、私のような「たまごのせごはん」ではなく、れっきとした、たまごに包まれたタイプのものだ。

自分にできないことを人に強いる、私はそういう小さい男なのだ(←面倒くさい男っぷりよ!w 編集部より)。

(レシピ)俺の「たまごのせごはん」

材料(1人分)

  • ごはん…茶碗1杯分
  • ベーコン…30g
  • ベジタブルミックス…20g
  • ケチャップ…大さじ1
  • バター…10g
  • A【生卵…1個 牛乳…10ml 砂糖…小さじ1 塩…少々】
  • お好みで追いケチャップ…適量

作り方

①フライパンを中火にかけて、バターと細かく切ったベーコン、ベジタブルミックスを炒める。全体に火が通ってきたらケチャップとごはんを加えて、全体が絡まるまで火を通す。

を皿に移して、しっかりとかきまぜたAをフライパンに回しいれて、ふちが固まってきたら火を止めて余熱で半熟にする。

③ケチャップライスの上にをのせて、お好みでケチャップをかける。

結論

でもやっぱり、あの綺麗なやつは作ってみたい。


コラム/レシピ:キムラケンジ

イラスト:まつざきしおり

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